(18) シャルトル大聖堂
パリから南西へ約80キロ。車で訪れる人達に、ボース草原の中から屹立する二つの塔が見えてくる。
シャルトル大聖堂は、フランスに数多いNotre-Dame Cathedral(ノートルダム大聖堂)の一つである。別名「聖母マリアの家」と呼ばれる。
僕はこのシャルトルを、5回ばかり訪れている。しかし、この「聖母の家」の全容を把握できないままの今日を感じている。それほどに、ここには美術と建築の 粋、それに加えて、あの名高い「12世紀ルネサンス」の学問の功績もある。美術の中心は、聖堂を囲む壁を覆い尽くしたステンドグラスの窓と、聖書の物語を 刻んだ彫刻群にあると言えるだろう。全てを知り尽くせないながらも、知る限りを記述するとすれば膨大なページを必要としてしまう。
そこで、限られたポイントに記述を絞ることにする。
教会建築の正統的なスタイルで構成されている。大火災の後、残されたロマネスク様式の上にゴシック建築が重ねられた。しかし、例えば北塔、南塔の形状の違 い、高さの違いというアンバランスが全く気にならないほど、このシャルトルの大聖堂は美しさと荘厳に満ちている。西正面にそびえる北塔(下図のB)は、高 さ115メートル、そして南塔(下図C)は高さ106メートル。両塔に挟まれた「王の玄関」(A)の上部と、また、背後に柱を背負って、旧約聖書の人物た ちが彫られている。
この西正面玄関(A)、そして、南門(H)と北門(G)の配置は、一つの定型となっている。北半球の地にあっては、南側は陽の位置を占めている。この扉口 上方に咲く大輪の薔薇窓が「キリスト礼賛」の主題を意味する。聖母は北にあって、その子イエス・キリストに光の恵みを与えている。薔薇窓の下、扉口に「最 後の審判」の図像が刻まれている。
「シャルトル・ブルー」として有名なステンドグラスの青は、「The Blue Virgin Window(美しき絵ガラスのマリア)」で美の極に達する。
だが、僕が最も印象付けられた美術作品は、The Ambulatory(周歩廊)に据えられた、聖母子を物語る彫刻にあった。それは、イエスの生誕後、聖母子を訪問した東方三博士の物語でもある。幼子を 膝に載せた聖母に、ある雰囲気を添える表情が、常に僕の中で強い印象を持続していた。聖堂完成は12世紀、したがって、それより後年、16世紀に据えられ た一連の彫刻作品は、たしかにルネサンス美術の輝きを伝えてくれる。
これは独りよがりの感懐かもしれない。しかし、ルネサンス美術の大家、そして後世の美術家たちが必ずそこに戻っていくという古典派美術の元祖ともいうべ き、ラファエロの作品に、僕の感懐は繋がっていく。「The Holy Family of Francis I(フランソワ1世の聖家族)」----(教皇レオ10世が時のフランス王に贈った作品の意味)----、の聖母の表情に、落ち着いた安堵とともに、幼子 への、形をなさない不安がのぞかれる。それは人の子の母としての常なのかも知れない。
下の図と、その上部の説明で、概略は把握できることと思う。「聖域(祭壇)」に向かって座り、また跪く信徒たちの場は、中央の広いNave(身廊)に占め られている。東端にある三つの放射状半円形チャペルにも、その外壁を覆う見事なステンドグラスが埋められている。聖マルガリータとカテリーナの二人の聖 女、偉大なる聖ヤコブ(St. James the Greater)に混じって、Charlemagneの物語が彩りを添えている。シャルルマーニュとは、あのカール大帝のことである。彼は文盲と言われて いるが、カロリングルネサンスを興し、学問を奨励した「フランク王として初のローマ皇帝」であった。
東端に付け足しのように作られたSt.Piat Chapel(聖ピアト・チャペル)には、興味深い物語がある。
大聖堂建築より以前、シャルトルはすでに巡礼の地であった。メロヴィング朝からカロリング朝の初期にかけて、巡礼者たちは、聖堂ではなくて'Well of the Strong Saints'(強い聖人たちの井戸)と呼ばれている井戸に詣でた。この井戸は、初期のキリスト教迫害時代に、殉教した地元の聖人たち(聖ピアト、聖シェ ロンほか数名)の死体が投げ込まれた場所と、人々は信じていた。………このSt.Piat Chapelは通常、見学はできないが、時々、イベントによっては展示室として用いられることがある。
[シャルトル大聖堂平面図、および説明]
A→Royal Portal(王の玄関)
B→North Tower(北塔)
C→South Tower(南塔)
D→Nave(身廊)
E→North Transept(北翼廊)
F→South Transept(南翼廊)
G→North Porch(北玄関)
H→South Porch(南玄関)
I→Choir(聖歌隊席)
J→Sanctuary(聖域―祭壇)
K→Ambulatory(周歩廊)
L→Apsidal Chapels(後陣―礼拝堂東端の半円形のチャペル・聖歌隊の後ろ)
M→Vestry(聖具室)
N→St.Piat Chapel(聖ピアト・チャペル)
- 編集日時:2012/5/15 17:40:15
- 回答日時:2012/5/15 05:46:18
